「あとひとつ。選択肢は…まだ残ってるぜ、ユイ」



 エイジは、優しい眼差しをユイに向ける。

 そんなことは分かっている。

 このまま自分の運命から逃れて二人と一緒にいれたなら 、どれだけ嬉しいか。

 ――…だけど。



「…言わないで…」



 ユイの目から、一筋の涙がこぼれた。

 この運命の糸を断ち切ることはできない。

 今ここでひと時、運命から逃れたとしても。

 ――…それが、一瞬だけの夢でしかないことを、ユイは十分に 知っていた。



「ここで…」



 ユイは、真っ直ぐに二人を見つめる。



「ここで、お別れ…ね」



 エイジもレンも、ふっと笑う。

 そして、視線を合わせずに、ゆっくりとユイの横を通り 過ぎてリビングを出ていく。

 震える手で、ユイは銃を取り出した。

 奥歯を食いしばり、キッと前方を睨み付ける。



「…バイバイ」



 リビングの窓から、ユイは外に飛び出した。