「何だよ?」

「事故に見せかけて殺す。奴らの得意な戦法よ。ここでカ ーチェイスなんてしてたら、それこそ奴らの思うツボだわ 」

「なるほど。だとしたら、どうすりゃいいんだ?」



 短くなったタバコを灰皿でもみ消し、エイジは聞いた。

 少し考えて、ユイは窓を開けて、銃の照準を後続車に合 わせた。

 そして、エイジとレンが止める間もなく、ユイは発砲す る。

 タイヤに銃弾を受けた車は、蛇行しながら後ろの二台を 巻き込み、路側帯に激突した。



「おいおい…」



 茫然とする二人に、ユイはにっと笑う。



「先手必勝。お願い、ダウンタウンに行って?」

「…どうする気だ?」



 さっきよりは幾分かスピードを落としながら、レンは聞 いた。

 ダウンタウンといえば『ホン・チャンヤー』の本拠ビルもある。

 当然、今ユイを狙っているロンという男もダウンタウン にいる筈。

 それなのに、わざわざこっちから出向いていこうと、ユ イは言うのだ。



「確かに危険は増えるけど、あそこは私の本拠地でもある の。今までは誰が狙っているのか分からなかったから戻れ なかったけど、もう平気。相手が分かれば、こっちの身の 振り方も考えられるから」



 自信に満ちたその言葉に、エイジとレンは少しだけ顔を 見合わせ、ユイの言う通りにすることにした。

 車は程なくダウンタウンに到着する。



「ダウンタウンの何処に行くんだ?」



 レンの質問に、ユイは、ダウンタウンの東側にある一軒 の家に向かうように言った。

 そこは、古びてはいたが豪華な造りの建物だった。



「ここは、私の両親が住んでいた家なの。今はもう誰も住 んでいないけど」



 懐かしそうにリビングを見渡しながら、ユイは言った。



「お父様とお母様は?」



 エイジは聞いた。

 ユイは、ふと目を伏せる。