「……それでね、みんなの理想のタイプを合わせると、年収1000万以上、身長180cm以上、清潔感のあるスポーツマンの眼鏡さんってことになったんだ」
香苗は洗剤をゆすいだ皿を水切りに置いた。
「……無茶苦茶ですね、それ」
香苗が洗った皿を拭く光也が呆れ返っている。
「そうかな?みんな正直だなって感じ」
理想と現実の違いくらい彼女たちも知っている。
それでもなお、理想の男を追い求める姿はいっそのことすがすがしい。
……その情熱を少しでも仕事に向けてくれたらいいなとは思うけれど。
「ちなみに香苗さんは?」
皿を拭いていた光也がやけにそわそわして身体を隣に寄せてくる。
「聞きたいの?」
「それは、まあ……」
普段は意地悪なことを言うくせに、こういうところは素直で微笑ましい。
「もちろん」
香苗は背伸びをして、光也の耳に唇を寄せてこう言った。
「料理上手な人!」
*End*



