「大田?なぁ、大田!!」
「へっ?な、どうしたの?」
「は?どうしたのじゃねぇよ。なにボケーっとしてんの?」
「べ、別にボケーっとなんか……」
「ま、いいけどさ。なんかあったか?」

なんかあった?
あったと言えばあったけど、大したことじゃないしなぁ。

「何もないよ?」

うん。何もなかったことにしよう。

「俺を騙そうとしてんの?そんな、キョドった顔してさ?」
「えっ!?」

わ、私ってすぐ顔に出るのよね。嘘ついたことバレたかな?
目の前には、流星の鋭く光る瞳。
こ、こわい。

「おまえって、嘘つけないだろ。バカだな。で、何があったの?」
「い、いや。ほんと、大したことじゃないし……。」
「は?だからって、俺がこんなに心配してやってんのに言わないんだ?」
「え、いや。そうじゃなくて。。」
「じゃ、なに?」
「あ、えっと。坂田春斗くんって……知ってる?」
「え?春斗?そりゃあ、知ってるよ。部活一緒だし。仲良いよ。」

え!知ってるの?部活同じって、、、まさか流星がわかると思わなかった。

「ん、で?春斗がどした?」
「ん?どうもしない。」
「は?」

もぉ……いちいちキレないでよぉ

「あ、えと、本当にちっちゃいことで...」
「ん、別にいいよ。」

急に優しい口調になる。

「あ、あのね?」

私は、今日届いた、あの人からのメールのことを翔太に話した。
全部話し終えた時、少し間があったけど、そのあと翔太は私に
「お前は、そのメール届いてどう思ったわけ?春斗のこと好きにでもなったか?」


え....。確かに、知らない男子からメールが届いただけだ。それに、そんなこと高校生の私たちにとって日常茶飯事。
なのに、私は、何をそんなに気にしてるんだ。。。


「わかんなーい」
なに、言ってるんだ、私。こんな曖昧な返事をしたら翔太に誤解されてしまうじゃないか!!!
本当はもっともっと言い分はあった...でも、今の私には言葉を考える余裕なんかない。


私がそう言うと少し困ったように驚いた顔をする翔太。
「まじかよ」


私たちの間に流れる少しの沈黙の中、先に口を開いたのは、翔太だった。

「お前さぁ、単純すぎんだよ。メールなんて届くの普通のことじゃん。そんなんで、トキめいたわけ?そんな簡単にお前は落ちんのか?」

なんで、そんな不機嫌な口調なの?
別に私は.....


「好きじゃないもん。その....さっきは、上手く言葉にできなかっただけ。だから、誤解させちゃってごめんね。」


弱々しい私の声。自分のことながら、情けない...。


ずっと俯いている翔太。怒ってる証拠だ。
小さい頃から、ずっと変わらないの。
これが、翔太の赤信号。


「しょ...」
「俺こそ、ごめんな。ちょっと、今日はなんか調子狂ってるわ。もう、部活行こうかな。じゃあ、気をつけてかえ...」

「しょーたー!!!!!!」


誰かの大きな声が翔太の声を遮った。


「んだよ...」
翔太はおっきなため息をついて、ベランダに出た。
その後、グランドを覗くとチラッとこちらを見て、手招きした。


私が駆けつけると、小さな声で「ほあ、あれが春斗。坂田春斗だよ。」

グランドにはサッカーのユニホームを着てボールに足をのっけている男の人がいた。
遠くからだから、顔はよくわからないが、きっとモテるんだろうなって感じ。フワフワした茶色の髪がよく目につく。


「しょーたー!お前が来ねぇーと試合になんねぇーんだけどー!なに、してんだぁー?」


2階に向かって大きな声で叫ぶ彼。

「なんでも、ねぇーよー!こいつとしゃべってただけー」
そういって、私の頭に手をのせる。

「お前、女かよー!!!つか、なんていう子ー??」
「大田ゆい」
「えー?おおたゆー??誰だそれ?」
「くっそ、耳遠いのか、お前!!お・お・た・ゆ・い!!!!!」

翔太が私の名前をすっごく大きい声で叫ぶ。
ちょ、みんなこっち見てるじゃん><

「しょ、翔太!そんな大きな声で私の名前叫ばないでよー////」
「は?お前なに照れてんだよ」
「べ、別に照れてなんかない!!!」

私のその反応が面白かったのか、いつまでもニヤニヤしてる翔太。
なんなのよー><

「あれ?春斗は?」

そういう翔太の声で、私も再びグランドを見る。
さっきまで、いたはずのあの人。春斗くんがいない??


「ったく、なにやってんだ、あいつは。まっ、そろそろ時間も時間だし、あいつもうるせぇーから、俺もう行くわ。じゃあ、気をつけて帰れよ?」

「う、うん!翔太もサッカーがんばってね!」

「おう」っと私に微笑んで、手をヒラヒラとさせたまま教室を出て行く、翔太。
私も、帰ろうかな?荷物をまとめていると....