端正な顔立ちに落ち着いた雰囲気

吸い込まれそうな漆黒の瞳と無造作にセットされた黒い髪

どのくらいキャパがあんのよ、とついつい突っ込みたくなる重そうな頭を支えるすらりとした首

男の割には形のいいきれいな手でハンドルを器用に操る

ブレーキのタイミングもアクセルの踏み方もうまくて

ついつい眠気が襲ってくる

助手席でまどろめるのは、彼女である自分だけの特権だ

こうやって海斗と過ごす年末も3回目を迎えた

毎回、毎回、医局で過ごしている記憶があるのは、哀しきかな

でも、それでもいいか、と思えるほど

特別な思い出なんてたくさんなくてもいいと思えたのは、

それだけ海斗から与えられるものを感じられるようになった証拠

大切なのは、日常に流されないことだ

消えていく、忘れかけていく想いを見逃さないことだ

流れていく風景を見つめていたしるふは、

ふと視線を向けた先に右手の薬指に光るペアリングが目に付いて

ふふふと一人微笑む