やさぐれ女の純情



「私は先に戻っているから、気にせずゆっくり来なさい」


「あっ、はい。社長、すみません」


姿勢を低くしてそそくさと足早に遠ざかる社長に聞こえる声をだすと、


慌てて振り向いた社長が口の前で人差し指を立てる。


咲樹は何度か大きく頷き、


両腕を伸ばして携帯電話の通話口を押さえていると社長に知らせた。


それを知った社長はにっこり咲樹に微笑むと素早く身をひるがえし、


やはり低い姿勢で倉庫へと向かって走り出した。


二分四十四秒と表示されている画面を待受け画面に戻し、


咲樹はメールのマークが描かれているボタンを押す。


中ボ……。百合の要件は完全なる業務連絡で、


大ボスが逃げる必要性は全くなかった。


あのクロガキ、社長が百合さんを恐れるほどの値段だったのか~。


まぁ、百合さん、怒ると半端ないからな……。


そんなことを思いとぼとぼと倉庫に向かいながら、


咲樹は清久にメールを打った。