そもそもこの黒柿を手に入れたのは、 社長が懇意にしているお客様の願いをかなえるためだ。 小さくていい。六十センチ四方もあれば十分だ。 ただ、自分が〝これだ〟と思う、 そんな杢目の一枚板で座卓を造ってほしい。 黒柿で座卓を造るなど身に余る贅沢なのは分っているが……、 余生が思いのほか退屈なものでね。 破顔してそう呟いた友とも呼べるお客様のこれからに、 少しでも色を添えられるのであればと 元の持ち主と何年もかけて交渉し、やっと手に入れた銘木だ。 いらないとは言えない。