強く握りしめた携帯が、重りの役目を果たしているかのように 咲樹の片腕は大きく前後する。 その腕の早いリズムに合わせ、 膝丈のスカートが実際より十センチメートルも短くなるくらいの大股で歩くスピードはかなりのものだ。 あまりの迫力に行きかう人々が道を譲るほどに。 それでも咲樹は、先を急ぐ。 「おい、千駄。こらっ! 返事しろって。おいっ――」 自分の手の中で叫び続ける、男のもとへ。 煮えたぎるこの思いを、早くこいつにぶつけるために。