「あれは、エリスト…?」


リーダとリタさんのお店を出た後、少し町中をふらふらと歩いていた。
その時、角をちょうど曲がっていく魔法使いが見えた。

アイツが町中に普通にいることがなんだか物珍しくて、魔法使いを追いかける。


私も急いで角を曲がったが、その先の路地に魔法使いの姿は既になかった。
一本道だったので、とりあえず奥まで進んでみることにした。



進むごとに、建物の影のせいでどんどん薄暗くなっていく道。なんだか肌寒い。


やがて行き止まりが見えてきたのだが、ついぞ魔法使いの姿は見つけられなかった。

「おかしいな…一本道だったと思うんだけど」

そう不思議に思いながら進んでいたら、行き止まりの壁近くに何か人影らしきものが見えた。


あれは……



「おや、珍しいねぇ。あんたが来るなんて」


近付いていくと、老婆のようにガサついた声が飛んできた。

声を掛けてきた人物は、闇に溶け込むように真っ黒なフードを被り、顔には黒いベールをしている。
さらには、黒い布がかけられたテーブルの上に水晶玉。


例の魔女の末裔である占い師のおばあさんだ。

声から皆、おばあさんと推測しているのだが、誰もその素顔や年齢を知る者はいない。
すべてが謎に包まれている人物。


「お久しぶりです。数年ぶりでしょうか」

「そうだねぇ。あんたがまだこの町に派遣されてきたばかりの頃だったかねぇ」


私が死神としてこの町にやって来たばかりの頃、町中を探険している時に丁度このおばあさんに会った。
その時は、このおばあさんが占い師だと知らなかったので、占いをしてもらった訳ではないけど、少しだけお話をしたのだった。

それから、占い師のおばあさんの噂をあちこちから耳にするようになり、そこでやっとあの時出会った人がそうだったのだと気付いた。



「最近、めっきり占いが外れてしまってるそうですね。町で噂を聞きました」

「知っていたのかい。じゃぁ、魔力の波動のことも聞いているのかい?」

「一応は……。あっ、そういえばこの付近でエリスト…魔法使いを見ませんでしたか?」


魔力という単語で魔法使いの事を思い出し、聞いてみたのだが、おばあさんが口を開くまで少し間が空いた。



「………ああ。王様に仕えているあの坊やだね」


見えているのか分からないが、コクリと頷く。