灰色の空。どこまでも続く荒れ果てた土地と瓦礫の山。
色の感じられない世界は、寂しさしか残らない。



ああ。またこの夢――。
夢だとわかっているのに、どこか現実味のある世界。
またしても、私ではない『私』がいた。







「斬っても斬っても…ほんとキリがないわね」


手には大鎌。腰までの黒いマント。
夢の中でもやはり『私』は死神。



「そうね。少し休憩しちゃいましょうか」


大鎌に向かってそう言った『私』は、その場を離れ、荒廃した土地を宛もなくフラフラと歩き出す。



「ほんと…酷い有り様ね…。まさかこの世界がこんなになってしまうなんてね…」


誰に言うでもなく、否もしかしたら大鎌に言っているのかもしれない独り言をいいながら、暫く歩いていると、遠くに何かが見えた。

「……あれは、」



瓦礫の山しか残っていない、建物の残骸の中に1ヶ所、まったく損傷もなく、ただ整然と建っている立派な城があった。
何故、周りの建物と違い、この城が無事だったのかすぐにわかった。

―――氷。

城全体が氷に覆われていたのだ。
恐らく城の周りにあったであろう水路は残念ながら枯れ果て、堀が決壊してしまっているが、いくつもの塔と城そのものは氷の中で綺麗なまま残されていた。

人の気配はもちろんない。
そもそも生き物の気配がこの空間にはなかった。



何かに惹き付けられるかのように、『私』はその巨大な氷の山にも見える城へ近付いて行く。



だが、そこのシーンで1度夢は途切れてしまった。



再び夢が再開した時には場所が変わり、どこかの室内だった。
夢なのだから、五感などは感じないはずなのにその部屋の中はとても寒かった。

広々とした空間。壁や天井には意味不明な文字や謎の紋様。白い柱があちこちから天井へと延びている。

そんな空間の最奥に、1段、2段と高くなった床があり、その上に白い棺のようなものが横たわっていた。
先程見た城のように、その棺も全体が氷で覆われていた。


大理石のような床をコツコツと靴音を響かせながら、『私』はその棺に向かって進む。
棺の目の前までやって来た『私』は、なんの戸惑うこともなく、その中を覗く。

そしてその中には…………