「………死神さん、僕が怖いですか?」

「えっ…」


ずっと黙っていただけの魔法使いが、声を発する。

「死神さん、急いでこの城から出た方がいいですよ。直に全てが凍ってしまう」


冷たい瞳のまま続ける魔法使い。
私の呼び方も、名前をお互いに知る前のものに戻ってる。

『死神さん』元々そう呼ばれていたはずなのに、今では何故かその呼び方をコイツにされると、寂しい気持ちになる。

途端に距離が空いてしまった気がする…。



「じゃ、じゃぁ!アナタも一緒に行きましょ」


ゆっくりと首を振る魔法使い。


「僕はこれから行かなくちゃいけないんです」

「どこに…?」

「『魔法界』に」



魔法界…………?
聞き馴染みのない単語だった。

この世界には、下界、天界、魔界、この3つで成り立っている。
魔法界なんて、聞いたことがなかった。



「魔法界って……」

「僕の故郷です。そこにキングが囚われています」


魔法使いの故郷。それが魔法界?
それに、キングが囚われてるって…。

頭の処理が追い付かなくて、思わず呆然としてしまう。


「僕は絶対にキングを取り戻さなくてはいけません」

「それなら!私も………っ!!??」


私も一緒に行くと、言おうとした時だった。
突然私の体が透け始めた。

「な、なんなの!??」

「……天界は、この件に関して干渉しないことに決めたんですね…」

「どういうこと!?エリスト、何か知ってるの?!」

「死神さん、もしまた会えたら僕を殺して下さいますか?」

「アナタこんな時に何言ってるの!??」


そうこうしているうちに、私の体はほぼ消えかけていた。


「死神さん、僕は…………」


魔法使いの言葉は最後まで聞けなかった。