触れてみたい〜愛しい彼女の傷跡〜

「練習?」

俺はただ、そう聞いただけなのに

「このことは誰にも言わないで!お願い!」

答えはなく、また向こうの意見で返される。

「あー…えと、うん。言わないけどなんで?」

俺は改めてもう一度質問をする。

「本当はバスケ苦手だから…。」

彼女はなぜか申し訳なさそうな顔をする。

「あんなにうまかったのに?スリーポイントが苦手なだけじゃなくて?」

「違うよ!練習したからできただけだし。今日のはまぐれではいっただけで…。今も練習しても全然入らなくて…」

彼女は早口で言い切ると、ため息とともにうつむいてしまった。

確かに冬花のシュートは見ていたかぎり、一度も入っていない。

俺が何かを喋ろうとすると、冬花の腹がなった。

「飯…。食ってねぇの?」

顔を真っ赤にして彼女はうなずいた。

「さっき、志村さん達から逃げてきたから…」

なるほど…。

さっきの足音は志村から逃げる冬花のものだったのか。

俺は教室から持ってきた自分のパンを一つ差し出した。