あの時、冬花は俺を嫌ってしまったのか?

それとも照れて逃げただけなのか。

どちらなのかもわからない。

もし、冬花が俺を嫌ったならもう話せないのか。

この気持ちすら伝えていないのに?

そんなのは嫌だ。

彼女の声が聞きたい。

昨日はこの手の中にいた彼女の体温。

俺は手を強く握り締める。

もし…照れていたなら?

俺にも望みがあるということか?

気持ちの浮き沈みが激しすぎて、どんどん疲れてくる。

気持ちを入れ替えるためにも、俺は洗面所で顔を洗った。

それでもこのモヤモヤは消えない。

部屋に戻ったってこの時間だ。

寝てしまったら起きられる気もしないし、眠れる気もしない。

俺はリビングの自分の指定席に座る。

しばらく考え込んでいると、母さんが寝室から何か独り言を喋りながら出てきた。

「昨日下準備しといたお肉と…って。あ、秋彦!?」

気難しい顔をして考え込んでいる俺を見て驚いたらしい。

「…おはよ。」

俺は一言そういった。

そんな俺に母さんは戸惑いながら俺にもう一つ質問する。

「あ、あんたご飯は?」

「食う。」