触れてみたい〜愛しい彼女の傷跡〜

あれから数日たった。

あれ以来、俺は昼休みに体育館に行かなくなった。

深い意味はないけど、何となく気まずくて。

そのせいで冬花と口も聞いていない。

ギクシャクした関係のまま、球技大会前日の朝を迎えてしまった。

あくびをしながら俺はリビングに降りる。

「はよー…。」

台所にいる母さんに挨拶をして、机の上に準備されていたトーストにかじりついた。

「おはよう秋彦。そうだアンタいい加減にコレ返しにいきなさいよ?」

母さんは振り返ってあの弁当箱を出した。

━━簡単に返しにいけたら苦労しねぇっつの…

俺は弁当箱をにらみつける。

そんなとき上から女の声が聞こえてきた。

「入学早々彼女ができるなんて、さすが私の弟よね〜」

姉ちゃんが二階から自分のことでもないのに自慢げな顔をして降りてきた。

「彼女じゃないって言ってんだろ。」

めんどくさい。

姉ちゃんはあの弁当を持って帰ってきてからずっとこんな調子だ。

「隠さなくったっていいじゃーん。どんな子?」

俺の目の前に座った姉ちゃんは目を輝かせて、俺の返事を待っている。

答える気のない俺はさっさっとトーストを食って、洗面所に逃げた。