触れてみたい〜愛しい彼女の傷跡〜

俺も自分の顔が熱くなっていく。

なにを言っていいかもわからなくなって、居心地も悪くなっていく。

「やっぱ俺戻るわ。」

それだけいうと俺は走って逃げていた。

自分でもバカらしいけど気にせずにはいられなかった。

顔が熱くてこんな顔、冬花に見られたくなかった。

━━俺…バカみてぇ…。コレじゃ冬花に気付いてくれって言ってるようなもんじゃねぇか…

そんなに力を入れたつもりもないのに、教室のドアが大きな音を響かせ開いた。

目立たないですむわけでもなく、教室にいた奴らが全員こっちを見た。

俺はできるかぎり周りを見ずに自分の席へむかう。

席に着いたとたんにまっさきにアイツが声をかけてくる。

「どうした?赤い顔して」

「るっせ。」

顔を見られないようにしていたのに、五島は下から俺の顔を覗き込んでくる。

いつもと変わらないように振る舞うが、五島の興味が別の方向に傾く。

「何その弁当」

五島に指を差されてやっと、自分が片手に弁当箱を握り締めているのに気付いた。

慌てて逃げてきたから弁当を握ったままここまで来てしまったのだろう。

「今日は…っ!弁当なんだよ…」

俺はなんでもないような顔をして乗り切ろうとしたが、五島はそんなに甘くなかった。