触れてみたい〜愛しい彼女の傷跡〜

冬花はオドオドしながら俺が立っているラインまできた。

不安そうに俺を見上げ、俺の真似のつもりか、ボールをはずませねらいをさだめシュートする。

しかし、リングに跳ね返されて入らなかった。

「俺の動きの真似をしてもダメだって」

俺は思わず笑ってしまった。

「でもそんな簡単にイメージなんてわかないし…」

うつむく冬花からボールを取ってドリブルを始める。

「まず、意識を集中させる」

俺は手に触れるボールの感触に意識を集中させながら目は、ゴールリングから離さなかった。

「次にねらいをさだめる」

ボールを両手でしっかりとつかみ、少し身をかがめる。

「そんで、バネが跳ねるみたいにボールを押し上げる」

言葉の通りに自分まで軽く飛び上がる勢いでボールを押し出した。

さっきと同じようにボールはすんなりリングの内側へ。

「なんでそんなにうまくいくのー?」

冬花は悔しそうに俺を見上げている。

━━ヤベェ…頭撫でたい

彼女が小さな子供のように見えて、妹ができた気分だ。

「俺はバスケ部だったから」