触れてみたい〜愛しい彼女の傷跡〜

「食えよ。」

「え、いい…」

「いーからっ!」

彼女の言葉も聞かずに無理矢理パンを押しつけて、俺は体育館内に入り、ドアに寄り掛かるように座り込んだ。

「今度…。お昼返すね」

俺の隣に冬花も腰を下ろしてつぶやいた。

「別にいーよ。」

しばらく無言で互いにパンにかじりついていた。

「…おまえさ、思ったんだけどシュートの時力いれすぎ」

「え?」

さっきのシュート練習を思い出して気付いたことだった。

初心者にはよく有りがちなことで、腕の力だけで投げようとするのだ。

ちょうど冬花もそうだった。

「男なら力技でなんとかなるだろうけど、女じゃ無理だ」

俺はさっき転がってきたボールを拾い上げた。

スリーポイントの線の上に立つ。

意識を集中させながらボールをはずませる。

最後にねらいをさだめ、ボールを投げた。

ボールはそのままきれいにリングの内側に入っていった。

「…すごい。」

冬花は元々丸い目をさらに丸くする。

「全身を使って投げんだよ。体がバネになるみたいなイメージ?」

俺はボールを拾い上げ、冬花にパスをした。