「コースケがなくなったのは聞いてる。

 いろいろ、あったらしいな…」


いろいろ、の中に、

あたしのしたことも含まれているのか。

目の前の、この人は、

全てを知っているのだろうか。


「彼女って事も聞いてる。
 お前、コースケの彼女だろ」


有無を言わせず、ただ続ける先輩。


「コースケから写真見えてもらった。
 大平 梨奈だってことも…知ってた。
 大平の名前を飽きるほど聞いた」


先輩は遠くを見つめる。



「雨、降るかもな」



ポツリとつぶやいた声は、

あたしの耳になかなか届かなかった。




それから時間はアッという間にすぎ、

気付けば部室に向かっていた。



「先輩」



肩を並べたるく先輩に問う。


「ん?」


全部、全部……知っているのか。


「コースケは、どうやって死んだって聞いてますか?」


先輩の表情は少しだけ曇った。


「ガラの悪いヤンキーにやられたんだろ、
 打ち所が悪かったんじゃねぇの?」


とゆっくり言った。


「なんで今聞くの?」


あたしは返事ができずに、ただ時間が流れるのを待った。


「明日、雨……ですかね」

「ああ…そうかもな」


7月2日、午後7時13分。

オレンジになりかけた空に浮かぶ、雨雲。



………7月3日は大雨だった。