「どういう意味ですか」


思ったより低い声が出た。


「あの白い物体あるだろ?」


白い物体、がボールとわかるのに、

そう時間はいらなかった。


「あいつ、俺をめちゃくしゃにした」


……言ってる意味がわかんなかった。


「俺、野球してたんだよ」

「え」

「これ、マジだから」


ははっと笑い、右肩をまわした。


「故障しちゃったけどな」


故障……?


「オーバーワーク、
 練習しすぎて、肩痛めたわけよ」

「…そう、ですか」


先輩は遠くを見つめる。


「俺の親友、野球の天才だった。
 本当に。
 みんな認める、天才だったんだ。

 そいつに、勝ちたくて……

 親友だから、って事もあるかもしれない。
 絶対勝ちたい、
 俺は勝てる、

 ガキの夢だったよ、今思うと。

 勝てるはずなんかなかった」


先輩は野球、を見てる。


「だって、そいつは天才だったからな。

 天から授かった才能と、
 がむしゃらな努力して……

 俺はそんなあいつに勝てるはずなかった」


優しい瞳があたしに向かれる。


「………井原、孝介」






……………え、




コ………ス、ケ?