経子を制止する重盛。 「されど…」 経子が次の言葉を言おうとしたとき、重盛の腕の中にいた。 「大事なかったか?」 恥ずかしさで声が出ない経子は、こくこくと頷く。 「し、重太たちも、良い子で待っておりましてございます…」 やっと出た、蚊の鳴くような声で答える。 「……左様か」 重盛が優しく経子の髪を撫でる。 「陣中ずっと、子等と…そなたのことを考えておった」 「…殿」 そこで、経子の目から流れ出たものがあった。 「経子…?」 「誠は…怖くて。貴方様が、もしもお帰りにならなかったら、と」