「“平氏の嫡男”…」 意味深な笑みを浮かべる悪源太に苛立ってくる。 (こいつは……馬鹿にしておるのか) 余裕ありげな、まるで挑発しているような瞳を睨み付け、私は再び斬りかかった――。 ――私の射った矢を、やはり余裕で払う悪源太。 次の矢に手をかけると、夕日が沈んでいくのが目に入った。 (そろそろか…!) 「引け…!引けーーっ!!」 退却していく官軍を見て、流石の悪源太も驚いたようだ。 待賢門を出、我々は六波羅へと急いだ。