「殿。どうか御無事で」 「うむ、子等を頼んだ」 今日、いよいよ平清盛率いる官軍が出陣する。 「はい。……そして、この子を抱いてやって下さりませ」 経子が自分の腹の辺りを撫でながら言った。 「…!?まさか」 経子が笑顔で頷く――。 ――戦前夜。 「経子様…御加減は」 「だ、大丈夫よ和泉」 「されど、もう幾度も…」 和泉が心配そうに主人を見遣る。 経子は、先ほどからずっと気分が悪く、食べたものも戻してしまっていたのだ。 「……経子様。月のものは、ございますか」