最悪の事態を想像した経子は、悲痛な声を上げた。 「そんなことを仰せにならないで下さりませ!……もっと、ご自分を信じて下さりませ」 経子がそう言うと、何故か重盛は笑い出した。 「と、殿っ?」 「いや…いつか、前にもそなたが言うておったことを思い出してな」 「前にも……あぁっ!」 保元の年に起こった戦の折だった。 「わかっておる。ただ、もしもの時だ。覚悟はしておくが良い」 「…はい……」 俯いた彼女に重盛は「経子」と呼び、再び前を向かせた。