「経子さま」 晴れて夫婦となった重盛と経子。 「御義父上さまより、唐果物のお裾分けにございます」 あの日から早くも二年。楽しい生活が続いていた――。 「…今は良いわ」 …と言えば、そうでもなかった。 「左様にござりますか。……経子さま、殿のことをお気に病まれていらっしゃるのですね…」 重盛の妻となる前から経子に仕えている、和泉の前が言った言葉に、重々しく頷く経子。 そう、あれは十日ほど前――。