――その夜。 重盛と経子は、ひとつの部屋にいた。 (どう致しましょう。緊張するし…気まずうござります……) 経子は重盛と向かい合ったまま、ずっと俯いていた。 「……経子殿」 ふいに妻となった者の名を呼ぶ重盛。 「は、はい」 「先ほどは…誠に、申し訳ござりませぬ」 そう言った重盛は頭を深く下げた。 「いっ、いえ!」 慌てて首を横に振る経子。 「本当に、貴女が嫌な訳ではございませぬ。寧ろ…」