「……え?」 経子の周りだけ時が止まったようだった。 (兄上は、今…) 「重盛さまは御年二十一。年の頃も良いであろう」 (確かに。確かに、今、重盛さまと…) 「きっ、北の方殿は…御正妻は?」 はっとした経子は、早口に尋ねた。 「とんでもない。そなたが――平重盛さまの北の方となるのだ」 (信じられませぬ…) 「私が、あのお方の御正妻に……」 「…如何した、経子?」 心配そうに妹の顔色を窺う成親。