(もう北の方は娶られたのでしょうか…) 経子は、胸が張り裂けそうになった。 (私は。経子は、誠に貴方様のことを御慕いしておるようです…) こんな気持ちのままだから、縁談も気が乗らない。 口に出してはおらぬものの、周りの者もそれを察してか、何も言えなかった。 (ただ…兄上が縁談を持っていらっしゃったら、従うほかございますまい…) ――己は、帝の近臣の妹。 ――それでも、思い出すのはいつもあのお方… そんな時。