保元の戦より一年。 未だに経子宛ての文は多い。 周りの者は皆、早う経子を誰ぞの元へ参らせた方が良いのでは、と思うておった。 そのことは経子自身が一番良くわかっていた。 (いつまで経っても私がここへ留まっても、周りに厄介になるだけ。どなたかの元へ参った方が良きこと、というのはわかっております…) ただ。 経子は忘れられないのだ。 (重盛さま…如何御過ごしでしょうか?)