今まで、心配してばかりで。自分に頑なになってばかりで。 そのせいで他人を羨んでばかりで。 自分を信じるなど、頭になかった。 「…そうですね。武家の嫡男が女の方に励まされるなど、情けのうござりますね」 「いえ!私こそ…」 私は口角を上げた。 「今夜は月が美しゅうござりますね…。貴方のお陰で眠れそうです」 誠のことを申した。 「滅相もござりませぬ。では、明日。御武運を御祈りしております…」