「まあ、池禅尼さまに…」 この少女――経子の父は鳥羽法皇の近臣、中納言・藤原家成。 池禅尼とは、家成の従姉妹で、その頃勢力を伸ばしつつあった武門・平家の棟梁である清盛の養母。 そのことから、経子の家は平家と親戚関係にあった。 ――暫くして。 「では、父はそろそろ内裏へ戻る」 「承知つかまつりました。法皇さまの御調子は…」 「未だ芳しからず」 「左様にござりますか…」