それが誰のものかも確かめぬうちに、 「そこにおわすのは…経子殿でしょうか」 などと申してしまった。 すると、衣擦れの音がこちらへと近付いてきた。 「重盛さまにございましたか。如何なさりました?」 (経子殿だ…) 心なしか、鼓動が激しくなったような気がする。 「いえ、寝付けなくて。経子殿は…?」 「わ、私も同じにござりまする」 (私と、同じ――。) そう考えると、自然に頬が緩んでしまった。