俯き加減だった明子の顔が、再び経子の方へと上がる。
「そうなのですね?だから…私をお助け下さったのですか?」
生前の明子の話が、以前聞いた重盛の実母の話と酷似していることに気が付いたのだ。
目に涙を溜めたまま、明子は微笑み、頷いた。
「私は、清太…重盛に何一つ母らしいことはしてやれなんだ。だから、という訳でもないかもしれませぬが……その重盛の大切な大切な妻が、私と同じ病であの世に逝くのを黙って見ておることはできなんだ…」
(何てお優しい御心をお持ちなの…お顔の雰囲気もだけれど、殿は御母君似なのですね……)
「経子殿を此処に留めても、あの世の者がいつどんな手で経子殿を引き込むやも知れぬ。だから、我が琵琶で魔除けの音を奏でておりましたが…力不足だったようね」
「……明子様…いいえ、御義母上様」
「…!!……何です?」
「ありがとう、ござりました…!」
経子は目の前の姑に深く頭を垂れた。


