その暫く後。 眠れなかった経子は、部屋の前の廊下に立って、月を眺めていた。 (何故なのでしょうか。重盛さまのことが頭から離れないのは…) 物思いに耽っていると、向こうに人影が見えた。…と思ったら、その人影がこちらを向いたため、経子は身を堅くした。 (だ、誰…!?) 「そこにおわすのは…経子殿でしょうか」