矢刺さる先に花開く



――『――母上…母上…』


『――早くいらして下さりませ…』


(…この声は……維盛に、資盛?)


数刻程のち。
目を覚ました経子は、子等の声が聞こえたような気がして辺りを見回した。


だが、暗い部屋には誰もいない。


その間にも、子等の声は耳に響いてくる。


『母上…早う此方に。弟たちも寂しがっております』


次に聞こえてきた重三郎の声と共に耳に届いたのは、幼子の泣き声。


気付くと経子は立ち上がり、声の聞こえてきた方へと歩き出していた。