それから暫くの間、経子は明子と、誰もいない館で過ごした。
明子は経子を献身的に看病してくれ、経子もどんどん体が軽くなっていくのを感じた。
「あの…私も何か御手伝いを……」
流石に、ずっと何でもやってもらいっぱなしなのは気が引ける。
「なりませぬ。経子殿はお休みになって」
「されど、私ばかり…」
必死な経子。
だが、次に明子が発したのは、優しげな笑い声だった。
「あ、明子様?」
「ふふ…。病だというに、自ら働こうとなされるとは。……誠、清太は良き妻を貰うたのう」
「……きよ…た?」
(清太、とは…確か殿の御幼名では……?)
怪訝そうな経子を見て、明子ははっとしたように無理に笑顔を作って立ち去ってしまった。


