その女は、程なくして戻ってきた。
「経子殿のお口に合えば良いのだけれど」
「…!!何故、私の名を……」
女はそれにも答えず、持ってきた膳を差し出し、食べるよう促した。
経子は仕方無く口に料理を運んだが、その瞬間目を見開いた。
「美味しい……!」
「良かった!質素なもので。申し訳ござらぬ」
「と、とんでもない!」
確かに料理自体は質素なものであったが、それ以上に味の素晴らしさが勝っている。
女は…身なりからして、中・下級貴族の者か。
「あの…御名は、何と仰るのですか」
女は微笑んだ。
「…明子、と申しまする」
――明子。
経子は、どこかで聞いたことがあるような気がした。


