「重五郎…」 侍女が抱いていた赤子…昨年の暮れに生まれた重五郎を重盛に渡した。 「……大丈夫じゃ…母上は、そなたたちを置いて逝ったりはせぬ」 重盛はそう言い、息子たちに微笑みかけた。 すると、息子たちも多少は安堵したのか表情を和らげ、泣くのを止めた。 「父は今一度母上の様子を見て参る…」 そこまで言い、誰ぞに重五郎を任せようと辺りを見回すも、侍女がいない。 困っていると、「兄上」という聞き覚えのある声が聞こえた。