「何事とは!かような時に源氏物語など…!?」 重盛と呼ばれた少年は、書物を持って時子に話しかけている。 「まあ、源氏物語…。私も好きにございます」 「あら、良うござりますわよね!ほら重盛、経子殿も宜しいと――」 「母上!」 「…重盛。かような時こそ、恋する気持ちと言うものを大切にすべきなのですよ」 そんなことを言い合っている二人を微笑みながら眺めていた経子だが、視線を重盛に移した途端、その綺麗な目を見開いた。