執事の戯言


【side 優】


嗚呼、愛しのお嬢様。


嫌われてしまうかと思っていたけど、お嬢様はお心が広いお方。


そこに漬け込む私を、どうぞお許しください。


運転中、そんなことを考えながら、いつもとは少し違う帰り道に車を走らせる俺。


バックミラー越しには、外の景色を眺めるお嬢様のお姿。


横顔も綺麗だ…。


見慣れた姿でも、やはり見惚れてしまうほどの端麗なお姿は、いい意味で──罪だ。


「ちょっ、優!?前、前見て!!」


気づけば、目を見開いて前を指差すお嬢様と慌てた声が聞こえた。


その声で我に返り、視線を前に向ければ、数十メートル前には軽トラックが停まっているじゃないか。


俺も慌てて、かつ事故らないようにブレーキを踏んだ。


間一髪と言っていいのか、車は軽トラックの数メートル後ろで停まれた。


どうやら、赤信号らしい。