俺たちの間に、微妙な空気が流れる。 「……ご無礼を、お許しください、お嬢様」 理性を取り戻すと同時に、肩を震わせる彼女に気づいた。 俺は自分のことばかりで、お嬢様の気持ちまできちんと見切れていなかった。 今まで男とこんな至近距離まで接近したことがないであろう、お嬢様。 いくらお嬢様と親しかっても、俺は所詮、その他大勢の男であり、ただの執事だ。 そんなやつにいきなりキスを迫られたら、断る以前に何もできないじゃないか。