「よー、おかえり。どうだった、緑のゾーン」
「すごく疲れました。森さんはすごいです」
「ええっ!? わた、私ですか」
「だろー、意外とハードなんだよあそこ」
ラビは青い縁の眼鏡の奥で、目を細めて笑った。
開園から閉園までのたった九時間見ていなかっただけなのに、レンズ越しのそれがやけに久しぶりに思える。
(あ、そうか)
茅野がふと気付いたのは、そういえばここへ来てからラビと離れて行動するのはこれが初めてだった、ということだ。
九日前に樹のゾーンで会ってからずっと、部屋にいる時以外の時間をラビと過ごしていたのだ。
「明日は熱帯のゾーン行ってみるか」
「あ、はい、行きます」
「茅野も森も来ないから、ピーキーが淋しがってたぞ」
「え」
苦笑いを浮かべるラビの顔を見上げる。
ピーキーの、滑らかな毛並みを思い出した。
くん、と鼻を鳴らす声。
時々茅野に触れる、尻尾の先。
ラビの手が頭に乗って、雑な仕草で動く。
「おつかれさん」
条の中性的で綺麗な手とは違う、薄くて大きな手のひらと、ごつごつした指。
今日はよく頭を撫でられる日だ、と思った。
そして、それがなんとなく、嬉しい、とも。


