緑のゾーンは、茅野がここへ来た次の日に案内された場所だ。
もう数回ラビに連れられて足を運んでいるので、迷うこともない。


事務所の隣、街から正面ゲートを入ってまず目に入る芝生の丘が、“ふれあい動物広場”、緑のゾーンだ。

丘の頂上には動物たちの寝屋があり、開園時間中はなだらかな牧草地に放し飼いにされる。
今は開園前なのでなにもいないが、客が入れば興奮した人懐っこい動物たちが文字通り飛び交う、なかなか賑やかな場所だ。

牧場の囲いの入り口には、売店を兼ねた小事務所が建っている。
カントリー風の三角屋根のログハウスでは、アイスクリームやドリンクやクッキー、ちょっとした雑貨などの土産物も売っている。
小さな一軒家程度の大きさなのでそれほど広くもないが、『グリーンショップ』は『ゼロガーデン』の人気スポットの一つと言ってよかった。

事務所が近いので条も森もあまり小事務所を利用してはいないが、もう開園準備のためにここへ来ている頃だろう。
裏口へ回って、茅野はドアをノックした。


「森さーん、茅野です。今日はこっち手伝うように言われました」


しばらく待っても、誰も出て来ない。

客の声や動物たちの鳴き声などに紛れても音が響きやすいように、裏口のドアは一部が薄い板になっているのだが。
もしかしてまだ二人とも食堂にいるのか、と思いながら、もう一度ノックする。


「条さあん、ラビさんが呼んでました」


首を傾げていると、中からかすかに物音が聞こえた。
やはり中にはいるようだ。
仕込みの最中で手が離せなかったのかもしれない。
ばたばたと足音が聞こえる。