「ドロイさん、あの鳥なんですか?」


茅野が指差した先には、丸い鳥がいた。
茅野の知っている大きさで例えるなら、カモメくらいだろうか。
とにかく文字通りまん丸くて、白いボールに翼がついたような生き物だ。

見た目については茅野も慣れてきたのか、もう驚くこともあまりない(彼女もはじめは見たことのない動物たちの姿にいちいち驚いていたのだ。誰にも伝わってはいないだろうが)。
だが、昨日はいなかったはずの鳥がどうしてここにいるのだろうと、不思議には思った。

ドロイが答える。


「あれね、メールバードだよ」
「え? 本当に鳥なんですか、メールバードって」
「そうだよ?」


やはり伝書鳩のようなものだったのだ。
そう思って茅野が見ていると、ラビは紙にさらさらと素早く何かを書きつけて折り畳むと、それをメールバードのもとへ持って行った。
茅野がほんのわずかに目を丸くしたのは、次の瞬間だ。

メールバードは口をぱかりと開けると、ラビの手紙を、嘴の中へと入れたのだ。


「え? 食べちゃいましたよ」
「たべないよ、オスのメールバードはね、エサをクチにためておくんだよ」


得意気に説明したドロイの話では、メールバードはメスがヒナのために捕った木の実などの餌を、オスの嘴に仕舞っておく習性があるという。
それを利用して、特定の場所を記憶させることでメッセンジャーとして古くから使われてきたそうだ。
数ヵ所しか場所を記憶できないために最近では随分減っているようだが、ここでは事務所の場所だけ覚えておけば事足りるので、未だに重宝しているらしい。

ラビの手紙を嘴に仕舞い込んだメールバードは、開け放たれた窓から飛び立って行った。
どこかのゾーンの事務所へと帰るのだ。

ラビは振り返ると、言った。


「茅野。今日は緑のゾーンの手伝いに行ってくれ」
「え、はい」
「俺は別に仕事があるけど、平気だよな?」
「はい、大丈夫です」
「わからないことがあったら森に聞けばいい。それから、条に伝言も頼む。俺が呼んでたって言えばいいから」