動物たちの餌を保管してある倉庫は、シャッターを開ければ外の駐車場へ繋がっている。
樹のゾーンへの餌の運搬は、そこからクルマに積み込むのだ。
だが、ピーキーの食事の前に、茅野に割り当たっている仕事があった。
ドロイへの給餌だ。
大きな倉庫の隅を占める、小さめの水槽が並んだ場所へと向かう。
バケツに水を入れて、網を手にして、その水槽へ向き直った。
肉食魚には欠かせないそれは、生き餌の飼育槽だ。
水槽を泳ぎ回る自分の親指ほどの大きさの魚を見て、茅野は溜め息を吐いた。
「ほら、さっさとやっちまうぞ」
「はあ……ちょっと、静かにしてくれませんか」
茅野の言葉は、ラビに向けたものではなかった。
コゴイという名前の、これからドロイに食べられるその小魚たちに言っていたのだ。
この世界では、魚は喋る。
それは、どれだけ知能が低く、どれだけ小さな魚にもいえることだった。
ラビに倣って網を突っ込んだ水中から、「ウワッ」「ナンダヨ」「クンナヨ」などという甲高い不明瞭な声が飛び交ってくる。
ラビは気にせず次々とコゴイを掬ってはバケツに移していくが、突然仲間が拐われた水槽の中は、次第に阿鼻叫喚になっていくのだ。
記憶するという能力がないので、数回尾びれを動かせばそんなことは忘れてしまうのだが、その様子が茅野はなんとなく苦手だった。
三十匹ほどをバケツへ入れて、事務所へと向かう。
ラビが歩くたびにバケツの中では水が揺れ、コゴイたちがお互いにぶつかっては文句を言ったりしている。
茅野はひそかに、一種類でこんなんじゃ、水のゾーンにあるという大水槽はどうなっているんだろう、と思った。


