「おはようございまーす。今日はホットサンドですよー」
目の前に置かれた皿を見て、茅野は首を傾げた。
パンに具を挟んだものの表面に焦げ目をつけたものがホットサンドである、という認識は共通らしい。
だがパンの間からは野菜と、緑色のスライスされたなにかがはみ出していて、茅野にとってはなんともシュールな食べ物になっていた。
中身はなんなのか、とラビに尋ねたい口を、茅野はぐっと噤む。
もしなにか生理的に受け付けない類いの答えが帰ってきたとしたら、下手をすれば昼まで何も食べずに力仕事に向かうことになってしまう。
食べられないものが出てくるわけはないんだから、何も聞かないでおこう、という考えだった。
かじりついてみたそれは、ハムのような風味ととろりとした食感が、意外と美味だ。
間には甘酸っぱいソースも入っていて、シャキシャキという葉の歯応えもいい。
ぺろりと平らげて一息吐いていると、やっと条が起き出してきた。
切れ長の目が眠そうに細められ、まとめられていない長めの金髪が、緩やかにウェーブを描いている。
欠伸をしながら食堂へ入ってきた条は、三人に気付くと、ひらひらと手を振った。
挨拶を交わすその間も、気だるげに頭を掻いたりしている。
だが、手櫛で鋤いた髪を適当にまとめていたところにウエイトレスが来ると、急ににっこりといつもの笑顔を浮かべた。
「おはよう、今日も可愛いね、アンニカちゃん」
「またまたあ。そんなことばっか言ってないでさっさと食べろってんですよ。そして今日も一日馬車馬のように頑張ってくださいね!」
「アンニカちゃんに言われたら頑張らないわけにいかないなー」
爽やかな笑顔を返しながらとんでもないことを言ってのけた彼女、名前はアンニカといって、この食堂唯一の給仕係りを務めている。
長い黒髪に小柄で華奢な体はいかにも“薄幸の美少女”といった雰囲気だが、実のところは明るく元気で少し我が儘で、あの強面のシバを尻に敷くほど図太い精神を持つ少女なのである。
昼食など忙しい時間帯には、一度に五人前以上を細腕に乗せてテーブルの間を縫うように走る姿がよく見られる。
まるで食堂の給仕係りになるためにあるような平衡感覚を持っているのだ。


