翌日。
茅野が薄い黄色のツナギに『研修中』と書かれているらしい腕章(茅野にはまだこの世界で使われている文字は読めない)をつけて下へ降りて行くと、ちょうどラビに出くわした。
そのまま一緒に食堂へ向かう。
食堂は事務所の奥にある。
昼は休憩を取りに来た飼育員たちで埋まるが、朝と晩はあまり人が来ないようだ。
厨房で調理をする料理人は背が高くがっしりした体つきの男で、金髪のオールバックに常にサングラスをかけていて、近寄りがたいことこの上ない。
口数も少なく、必要最低限のことを押し殺したような低い声でぼそりと呟くだけで、あとは黙々と料理に徹している。
名前はシバというそうだ。
茅野は、ちょうどカウンターから顔を覗かせていた、ずいぶん高い位置にある顔を見上げてみた。
シバは視線に気付くと、サングラス越しに眉を寄せて見せる。
茅野はそろそろと目線を外して、テーブルへと向かった。
ラビの着いた席へ行くと、ちょうど森が食堂へ入ってくるところだった。
茅野に向かってぱたりと頭を下げる。
「かっ、茅野さん、おはようございます」
「森さん。おはようございます」
「よー、森、条はまた寝坊か」
「あ、そうみたいです、すいません……」
条の部屋は、森の部屋の隣にある。
茅野とは反対側の隣人だ。
だからなのか、同じ担当飼育員としてなのかはわからないが、森が申し訳なさそうに頭を下げた。
ラビは「森が謝ることじゃないだろ」と言って、突っ立っていた彼女に茅野の隣の席を進める。
また謝ったりお礼を言ったりしながら森が椅子に座ると、黒いワンピースにエプロン姿のウエイトレスが近付いてきた。
ワンプレートの朝食なのでそれなりに大きめの皿だが、彼女は細い腕で器用に三人分運んでいる。


