脚のないウーパールーパーみたい、という茅野の抱いた第一印象は、今もそれほど変わらない。
点と線で描けそうなシンプルな顔立ち。
笑っているようにも見える口が、なんとなく可愛らしい。
蛇のように長い体は二キュビト半、つまり一メートル以上もあった。
魚だが、あまり活発に泳がないためか、背びれや尾びれは極めて小さい。
胸びれはなく、えらの部分からは細長い外鰓が伸びている。
それらがまた、両生類のような平淡な体型を印象づけていた。
もといた世界では馴染みのない形態をした魚だったが、茅野は一度だけ、水族館で似たようなものを見たことがある。
たぶん川魚、くらいの覚えしかないが、ピラニアやピラルクーなどが入った水槽と並んでいたので、恐らく熱帯地域に住んでいるのだろう。
ただ茅野が見た“ハイギョ”というその魚は、水底に沈んだ足のないトカゲのようなイメージで、ドロイのような可愛らしい表情もなければ、色鮮やかでもなかった。
むしろ小さな目と不釣り合いなほど大きな口が恐ろしくさえ思えた、地味な色合いの生き物だった気がする。
そして当然のことながら、言葉を話したりは絶対にしなかった。
「ね、かわりにメダカくれない?」
「メダカ? メダカ食べるんですか、ドロイさん」
「うん、メダカのおサシミだいすき」
「こら、ドロイさん、茅野ちゃんにおねだりしても無駄よ! お刺身は週に一度だって言ったでしょう」
カローラの言葉に、茅野は首を傾げる。
大型の肉食魚が生き餌として金魚やメダカを食べるというのは、聞いたことがある。
けれどメダカって、あんな小さな魚、刺身にできるものだっただろうか。


