ちなみに、茅野がここへ来て食べ物の次に直面した問題は、物理的な単位だ。

メートル法が通じないのだ。
それに気付いたのは、この動物園の広さを訪ねた時だった。


この世界では基本的に『キュビト』という単位を使うらしい。
成人男性の肘から指先までの長さ、と説明されたが、いまいちぴんと来ない。

ようやく理解する気になったのは、茅野も覚えのある『インチ』という単語が出てきた時だった。

一インチは確か、二センチメートル半ほどだったはずだ。
ラビに聞くと、手の平を広げて親指の付け根を指したので、この世界でも同じだと考えていいだろう。
それから一キュビトは何インチかと聞いたら、十八インチだと言っていた。
つまり一キュビトは、約四十五センチメートルということになる。

重さの単位も茅野の知らないものなので、会話に時刻以外の数字が出てくると、少し面倒に感じる。
なにしろ、頭の中で咄嗟に自分の知っている単位に換算しなければわからないのだ。

なんのために「成人男性の肘から指先」や「親指の付け根の幅」などという大雑把でわかりやすい単位にしてあるのかわからなくもなるが、こればかりは仕方がない。
勉強しながら徐々に慣れるしかないのだと、割りきっていた。