園内の移動は、クルマでする。

クルマといっても、茅野の知っている、タイヤで地面を走る自動車などではない。
同じなのは、だいたい箱形で、ほぼ密閉できて、窓がある、という点くらいだった。


宙に浮かぶのだ。


プロペラなどは見当たらないし、そんな音も聞こえない。
音といえば、ごおおと言うわずかな音が常に鳴っているくらいだ。
地上から少なくとも一メートル半は浮かんでいるが、もっと高くも飛べるらしい。

条と森は自分たちが乗って来たクルマに乗って帰ったが、ラビと茅野が乗り込んだクルマよりも五メートルほど高いところまで浮かんで、ぐんとスピードを上げて先に行ってしまった。
ラビが、「森はスピード狂なんだ」と言っていた。


窓から下を覗くと、眼下の地面で、クルマの下の芝生が揺れていた。
クルマが通った跡を、波が追いかけるように風に靡いている。
クルマが真下に向かって風を噴射しているのだ、と気付いたのは、しばらく眺めてからだった。
ジェットエンジンのような仕組みで浮かんでいるらしい、ということだけは茅野にもわかった。