あたし、心実。

今日は学校で配られたプリントに載っていたボランティアに親友、梨音と来た。
思っていたより人が多く、人込みの苦手なあたしには結構つらい。
来なきゃ良かった、と思ってたとき、周りがざわついた。
なんだろと思ってると少し離れた所にいたリオンが走ってきた。

「ココ!ヤバいよ!!
超イケメン!!うちらと同じ小6だって!」

あたしたちの通う小学校、飛丘小にはイケメンがいない。
惜しいのはいるけど。
だから、イケメンというイケメンなんかそう滅多に見たことがない。
だから、考えたイケメンのレベルが低く、大した期待をしなかった。

「えー?どれー?」

正直、興味はなかったけど、面食いじゃないリオンが騒ぐくらいの人なら、と人を掻き分けて前の方に行った。

そこには、絵本から出てきた王子様がいた。
いや、正確には王子様のような人がいた。だけど。

かっこいい。ものすごく。
周りがキラキラしているように見える。

周りの音が聞こえなくなり、聞こえるのは、明らかにときめいている、トクン、トクンという自分の心音だけで。

あたしは彼氏がいるにも関わらず、その王子様に一目惚れしてしまったのだ。

ずっとドキドキ、ドキドキという心音を聞きながら王子様を見つめていた。
…というより、目が離せなかった。

「…コ!ココ!!…っココミ!!」

あたしを呼ぶリオンの声に、ハッと我に返り、周りを見渡したら、あたしとリオン、それから何故かいた、あたしのはとこの香夜(こうや)。
そして、王子様。
この4人しかその場には残っていなかった。

「あれ、みんなは?」

あたしがそう聞くと、リオンとコウヤは口を揃えて

「ココがぼーっとしてる間にバスに行ったよ!」

と云った。

あたし、ぼーっとしてたんだ。
王子様に気を取られて、自分の状態にも気付いてなかったらしい。

そして、急かされてバスに乗ったら空いていた席は一番後ろの4人乗りの席。
そこにリオン、あたし、王子様、コウヤの順で乗った。